法制審議会(法相の諮問機関)の区分所有法制部会は2023年6月8日,老朽化した分譲マンションの建て替えや修繕を促進する制度見直しの中間試案をまとめました。
建て替え決議の要件で,現行の「所有者の4/5の合意」を緩和し,
- 3/4に引き下げ,耐震性不足など建て替えを急ぐ事情があれば2/3に
- 事情があれば3/4に引き下げ
の2案を示しました。
また,大規模災害後,迅速な復興を図るための緩和策も盛り込みました。
マンションは,建物の老朽化と所有者の高齢化という「二つの老い」が進み,管理不全に陥るケースの増加が懸念され,合意要件の緩和を求める声があります。法務省は,財産権も関係するために慎重に検討しています。7月に実施するパブリックコメント(意見公募)の結果を踏まえて,さらに議論し,来年の通常国会に区分所有法などの改正案提出を目指しています。
国土交通省によると,築40年以上のマンションは2021年末時点で約116万戸,2041年末時点で約425万戸に増えるとの推計があります。
中間試案は,死亡した高齢者の相続人と連絡がつかないなど「所在不明の所有者」がいる場合について,現行では建て替え決議などで「反対」扱いになり,合意形成の妨げになるのを改め,裁判所の認定で多数決の母数から除外します。
建て替え合意要件を緩和する2案は,引き下げを認める事情に「築50年以上」や「給水管の腐食」といった緊急性の低い状況を含めるかどうか複数の考え方があり,議論を続けます。
地震など政令で指定された大規模災害の際,取り壊しや敷地の売却を認める合意の要件を,4/5から2/3に緩和。決議できる期間は現在指定後1年だが,3年に延ばします。
外壁や通路の補修といった修繕に関しては,こうした作業を進めやすくするため,所在不明所有者のほか,住人集会の参加要請に応じない「無関心な所有者」を多数決から除けるようにします。
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