これまでの投稿で何気なく「建築物」と「建築」という用語を使い分けています。法では,全く異なります。ここで,しっかり区別できるように理解しましょう。
建築と業としている方,建築士を目指している受験生などの方などは,当たり前に理解していらっしゃるので,あまり役に立たない投稿です。
「建築物」とは?
私の愛用している「新明解国語辞典」(三省堂・革装)には,残念ながら「建築物」は定義してありませんでした。
したがって,「法律的」に考えてみましょう。
「建築基準法」にしっかり定義してあります。
「法第2条」が用語の定義です。
30以上の用語の定義が規定されていますが,まず一番最初に登場します。それだけ大切な用語となります。
法第2条第1項第一号によると
建築物 土地に定着する工作物のうち,屋根及び柱若しくは壁有するもの,これに附属する門若しくは塀,観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所,店舗,興行所,倉庫その他これらに類する施設をいい,建築設備を含むものとする。
(補足:かっこ書きは省略しています)
要約しますと
- 土地に定着する工作物であること
- 屋根及び柱若しくは壁を有するもの
- これに附属する門若しくは塀
- 観覧のための工作物
- 地下若しくは高架の工作物内に設ける施設
の5つとなるといえます。
上記の上3つだけおさえておきましょう。(あと2つは,一般の読者様にはあまり関係することはないでしょう)
補足:「工作物」とは,人工の物という意味で,「自然物」に対立する概念です。
土地に定着する工作物であること
そんなの当たり前!?と思いましたか?
実は,建築実務において「土地に定着」の用語の解釈で討論になることがよくあります。
「自動車等」は,土地に定着していないのは直ぐに理解できますよね。
ここ数年でよく見られる「コンテナを利用した倉庫」はどうでしょうか?
正解は,土地に定着していると解釈され,「建築物」となります。
補足ですが,上写真のようなコンテナ倉庫は,「鉄骨造の2階建て」となるので,法第6条第三号に該当し,建築確認が必要になります。
ということは「構造計算」が必要です。
私も実際に経験して,雛形がなく,かなり構造計算に苦労した経験があります。
「ツリーハウス」というものをご存知ですか?
詳しくは,Google検索等で調べてみて下さい。
下に,私自身が実際に,2013年7月に見学した写真を投稿します。
結論から言うとこれは,「建築物」該当しません。
お施主様は,一級建築士を所有しており,上手く建築物の定義がら逃れています。
自然の樹木に建築しているので,土地には定着していないという考えです。
なかなか,一つの用語でも奥が深いです。
屋根及び柱若しくは壁を有するもの
これに関しては,当たり前のことです。
柱,壁が存在しても屋根がなければ,「建築物」でありません。
よく耳にする「建蔽率」。
「建蔽率」=「建築面積」/「敷地面積」
となります。
「建築面積」(詳細に面積を算出するのは意外と大変です)は,おおむね屋根の形状によって定まります。
これに附属する門若しくは塀
これは少し無理があるのではないかと思いませんか?
しかし,「門や塀」を「建築物」の定義に入れています。
それは,門や塀だけを取り締まる法律を別途作らないといけないからです。(しいてあげれば,「門・塀基準法」ですか?)
別の法律で規制するよりも,建築物として定義すれば,簡略できるからです。
単純に「建築物」といえども奥が深いことが理解できましたか?
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