建築業務をされている方や,建築士試験の受験生にとっては,あまりにも基本的な記事なので,読み飛ばしてください。
この投稿は,建築のプロ以外の「超素人様向け」の記事です。
建築の実務を行っていると,「建築確認」と「建築許可」を混同している建築主がよくおられます。
ごくごく稀ですが,とても残念なことに,プロでも間違えた認識をしている業者様が存在しているのも事実です。ルールというか法律を知らないでお客様からの仕事を受注しているのですか?不思議で仕方がありません。
序論
建築物を建築することにおいての申請業務で一番「基本的」なことなので,ここで理解しましょう。
要点
[ 要点 1 ]
建築物を建築するためには,ほとんどの場合,「建築確認申請」が必要です。
[ 要点 2 ]
建築物を建築するためには,ほとんどの場合,「建築許可申請」は不要です。
上記に「ほとんど」と書いたのは,言うまでもなく「例外」があるからです。
後に説明します。
【重要】(用語の定義)「建築」とは,建築物を新築・増築・改築・移転することをいいます。(法2条第1項第十三号)
提出先はどこですか?
まったく異なります。
- 「建築確認申請」→「建築主事」または「指定確認検査機関」(下に補足します)
- 「建築許可申請」→「特定行政庁」
(補足)平成10年の法改正に基づく建築行政の民間開放の措置により,建築主事以外であっても国土交通大臣または都道府県知事の指定した者(指定確認検査機関)は,申請者から建築確認申請書の提出を受け,審査して「確認済証」の交付を行うことができるものとされました。今現在では,こちらの「指定確認検査機関」に申請することが多いです。
申請書はどのようなものですか?
どちらの申請書も数枚になります。それぞれの申請書の第一面(いわゆる表紙)を示します。
建築確認を要する建築物はどのようなものですか?
建築基準法第6条に規定されています。ほとんどの場合に必要になります。
しかし,ほとんどの場合といわれても困りますよね。次に説明します。
特殊建築物
関係法文:法6条第1項第一号
- 特殊建築物で,床面積の合計が 200㎡を超えるもの
(用語の補足)「特殊建築物」とは,法第2条第二号に規定していますが,正確ではないですが,ざっくり,「戸建て住宅」や「事務所」以外の不特定多数の利用がある建築物と考えてください。
(補足)長年にわたり,上記の床面積は,100㎡でしたが,建築基準法改正(平成30年法律第67号)が,令和元年6月25日に施工されて変更になりました。(建築関連のお仕事をされている方は,注意してください。)詳しくはこちら。
大規模な木造建築物
関係法文:法6条第1項第二号
- 階数3以上
- 延床面積 500㎡以上
- 高さが 13mを超えるもの
- 軒の高さが 9mを超えるもの
大規模の木造以外の建築物
関係法文:法6条第1項第三号
- 階数2以上
- 延床面積 200㎡以上
上記以外の都市計画区域または準都市計画区域内の建築物
関係法文:法6条第1項第四号
よく街中で見られる木造二階建ての戸建て住宅は,これに当たります。
これらのことから分かるように,ほとんどの場合「建築確認申請」が必要になります。
逆に「建築確認申請」が不要な建築物はどのようなものか気になりますよね。
上に示した4項目以外の建築物となりますが,ピント来ないですよね。
ざっくりとして言うと,田舎?(都市計画区域または準都市計画区域外)の不特定多数が利用しない小規模の建築物(二階建ての住宅程度)ということになります。
【補足(重要)】上記の4項目の本文中の関係法文に,○号とアンダーラインマーカーをわざわざつけています。なぜかというと,業界では,どのような建築確認かわかるように,「○号確認」というからです。
建築許可とは?
文字通り,本来は禁止されていることを特別に許可してもらうことです。
従って,許可されないことが当然多々あります。
逆に「建築確認」は,審査の結果に基づいて建築基準関係規定に適合することを確認したときには,当該申請者に法で規定された期日までに「確認済証」を交付しなければなりません。
次に,「建築許可」について少し詳しく説明します。(難しい話しなので,読み飛ばしてもらってのかまいません)
この「許可」に関しては,特定行政庁(正確ではありませんが,知事・市長等と考えてください)の権限とされており,「許可」が「確認」に先行します。特定行政庁は,許可申請のあったものについて所定の条件を満たしているかどうか審査のうえ,公開聴聞会(法第48条),建築審査会の同意を得る,都市計画審議会の議を経る(法第51条),という手続きを要します。なお,許可申請には,地方公共団体手数料令第1条に定める許可申請手数料が必要となります。(もちろん,「建築確認」も手数料が必要です。ただし,申請先によって異なります。)
許可には,どのような種類があるのですか?
一般の読者様には,意味不明と思われるかもしれませんが,以下に記載します。(関係法文の順に整理します)
- 敷地と道路との関係に対する特例許可(法第43条)
- 道路内の建築制限に対する特例許可(法第44条)
- 壁面線による建築制限に対する特例許可(法第47条)
- 用途地域内の建築物の用途制限に対する特例許可(法第48条)
- 卸売市場等の特殊建築物の敷地の許可(法第51条)
- 容積率の制限に対する特例許可(法第法第52条)
- 建蔽率の適用除外のための特例許可(法第53条)
- 敷地面積の最低限度の特例許可(法第53条の2)
- 低層住居専用地域内の高さ制限の特例許可(法第55条)
- 日影による中高層建築物の高さ制限の特例許可(法第56条の2)
- 高度利用地区内の制限緩和のための特例許可(法第59条第4項)
- 高度利用地区内の高さの特例許可(法第59条第4項)
- 総合設計による容積率,高さ制限緩和の特例許可(法第59条の2)
- 再開発等促進区または沿道再開発促進区内における斜線制限の特例許可(法第68条の3第4項)
- 地区計画または沿道地区計画の区域内における斜線制限の特例許可(法第68条の3第4項)
- 予定道路に係る容積率の特例許可(法第68条の7第5項)
- 総合設計により同一敷地内にあるとみなして許可する建築物の容積率または高さの特例(法第68条第3項)
- 既存建築物を前提とした総合設計により同一敷地内にあるとあるとみなして許可する建築物の容積率または高さの特例(法第86条第4項)
- 同一敷地内認定建築物以外の建築物の建築についての容積率および斜線の特例(法第86条の2第2項)
- 同一敷地内許可建築物以外の建築物の建築についての容積率および斜線の特例(法第86条の2第3項)
- 災害後の応急仮設建築物の存続に関する許可(法第85条第3項)
- 仮設建築物の建築許可(法第85条第4項)
結論
言うまでもなくこのように,「建築確認」と「建築許可」は,まったく異なります。
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