この投稿は,ほんの少しだけ難い話しというか難い話しになりそうなので,興味の無い読者様は読み飛ばして下さい。
わたしたち「建築士」は,業務で数え切れないほどたくさんの法律に直面しています。
その中でも,やはり一番の軸となる法律が「建築基準法」です。
ほんのさわりだけ説明したいと思います。
概要
「建築基準法」は,昭和25年5月24日法律第201号(戦後すぐですね。GHQの影響は,定かではありません。時間がありましたら,調べてみたいと思います。前身は「市街地建築法」大正8年法律第37号です。)として制定されました。
要点は,第1条に規定されているように,国民の生命・健康・財産の保護のため,建築物の敷地・設備・構造・用途について最低の基準を定めた法律です。
法の構成は,とにかく複雑です。法の改正(正確には法を改正する法)が多いのも理由の一つです。建築を携わっている人でもなかなか理解してません。
「総統括規定」・「実態的規制」
これらの用語は法に用語として規定してありません(通称です)が,一般的に使わています。この法は大きく分類すると 「総統括規定」 と 「実態的規制」 に分けた構成となっています。
- 「総統括規定」 では,法の目的や用語の定義が主となっています。
その他には,行政等の手続きや罰則の規定があります。
- 「実態的規制」 では,建築物の用途やその規模などに応じて要求される構造を定めています。
*ここで特記すべきことは,構造とは,単に木造とは鉄筋コンクリート造などの構造体だけでなく,建築物の機能を有するために必須の仕組みを意味しています。
言うまでもなく,どちらも重要な法の一部です。
しかしながら,建築設計の実務では,「実態的規制」 との戦いが主となります。
さらに 「実態的規制」 は,「単体規定」と「集団規定」と分けられて規定しています。これらの用語も同じく通称です。
*しかし, 「単体規定」と「集団規定」 は,建築を携わっている人は日常的に使われている用語なので覚えておいて損はありません。建築士を目指している受験生は基本的必須用語です。
「単体規定」
「第2章」に規定されています。
ここで重要なのは,日本国内すべての地域が適用範囲となることです。
感の良い読者様なら,具体的にどのような規定が定められているかおおよそ想像できると思います。
そうです。「安全性」です。
建築物自体の安全性(日本は自然災害が多いので)や建築物の利用者の安全性(具体的には,災害時の避難や火災時の延焼防止があげられます)などが規定されています。
その他には,建築物の利用者の健康維持があります。具体的には,採光・換気・伝染病の防止・シックハウス症候群(一時問題になりましたよね)などがあります。
「集団規定」
「第3章」に規定されています。
ここで重要なのは,「都市計画法(昭和43年法律第100号)」連携していることと,日本国内の地域を「都市計画区域内」と「都市計画区域外」と大別して, 「都市計画区域内」 に限り適用範囲となることです。(正確には「準都市計画区域」となる地域を制定されましたが,ほとんど無視して良いと思われます)
先ほどの「集団規定」と同様に,感の良い読者様には,どのような規定が定められているか想像がつくと思います。
そうです。「建築物を取り巻く環境」です。
もし,あなたが静かな住宅地に住んでいるとします。隣に大きな工場が建設されたらどうですか?
いやですよね。
簡単に言えば,そのようなことが起きないように取り締まる?規定です。
他には「接道義務」という重要な規定があります。(法第43条)
かなり重要な規定なので,簡単に説明すには文章が長すぎるので,
**敷地は建築基準法の道路に2m以上接しなければならい。**
とだけ覚えておきましょう。(もちろん逃げ道もありますが…大変です)
蛇足ですが,なぜこのような規定を設けているか言いますと,緊急事態時に(消防車や救急車など)敷地に入ることができないからです。当たり前のことですが…
なので,都市計画区域内で建築物を建てる目的で敷地(土地)を購入する場合には,必ず「接道義務」を満たしているか確認して下さい。
また,「建蔽率」・「容積率」・「斜線制限」とかよく耳にしますよね。
これらもこの「集団規定」に事細かに規定されています。
その中で 「斜線制限」 (高さ制限と言った方がわかりやすいでしょうか?)に関しては,平成14年の法改正により「天空率」の計算を行えばかなり緩和されます。(少し高度な計算が必要ですが,普通の設計事務所ならどこでもできます。私自身も修業した設計事務所で数百件の業務をしました。今度,この「天空率」に関して投稿を考えています。)
文章では,なかなか理解しづらいので,法の概略の構成を図であらわすと以下のようになります。
もう,「法」の話しは飽きたでしよう?
でも,ただ単に建築基準法の「法」についてできるだけ簡潔に解説してみました。
「法律」のことを理解している読者様は当たり前のことですが,
ひとつの法律ではさらに「法」→「令」→「規則」→「告示」とだんだん細分化され専門化していきます。もちろん,すべて守らなければなりません。
さらに,「条例」をほとんどの地域で制定されています。
そして,厄介なのが俗に言う「内規」と言われるものです。県外に建築確認申請を行うと,
えええ???
そんな内規があるの?
と思わされます。
当該市町村のホームページを拝見すると,「建築指導要綱」として記載されています。
法的拘束力はないけどお願いします!このように指導しています!
というものです。もちろん,それを守らなければすんなりと建築確認申請はおりません。裁判をすればよいのですが,そんな時間もお金もないですよね。
補足
これから「建築設計を目指す学生さん」と「建築士を目指す方々」へのメッセージ
私が,師匠の設計事務所に入所して,まず感じたこと。
「あれ?ここは,法律事務所?」
です。
それが現実です。
大学の工学部建築学科で,建築デザインや構造力学等精力的に学んだ私にとって,かなりのショックを受けました。
大学の教授の講義と実務があまりにもかけ離れていました。
何度も言いますが,それが現実です。
法治国家であるのでしかたありません。
どんなに素晴らしい設計をしても,違法となれば罰せられます。
今の実務での作図は,ほぼ100%CADで図面化しましす。
なので,「CADオペレータ」として,設計事務所で勤務している方々がたくさんいます。
簡単には言えませんが,上司の指示通りに作図する仕事です。
業務のほとんどが作図作業となるので,作図が好きな人は楽しい仕事ともいえます。
身近な例えで言うなら,正看護師さんや準看護師さんでしょうか?
「医師」の指示において誠実に業務を行うという面で。
これから「建築士」を目指している方々は,上記の「医師」ですか?「看護師」ですか?
どちらの業務も素晴らしい仕事あることは,間違いありません。
どちらを目指しているのですか?
「CADオペレータ」には,今のところ民間資格は多数存在しますが,
国家資格はありません。
設計事務所が忙しい時には,「建築士」と 「CADオペレータ」 の区別なしに業務を行っています。
ここで言いたいのは,「建築士」はいつでも 「CADオペレータ」 になれるけど,
「CADオペレータ」 は,絶対に 「建築士」 になれないということです。
「建築士」になりたいのならば,「法律」を学ぶことは最低条件です。
もう,理解して頂いていただけていると思います。
どれだけの実力があっても「法律」の知識がないと「建築士」にはなれません。
スポーツで例えるなら「ルール」ですから。しかたありません。
「建築士」の試験でも,「法律」の科目で足切りになると,どれだけ高得点と取っても「合格」できません。
最後に
私は,幼少の頃から絵を描くのが好きでした。
もちろん,デザインにも興味がありました。
極端な「理科系」人間で,得意科目が「物理」と「美術」。
もともと建築には,興味がありませんでしたが
大学受験を考えると学部と学科を決めなければなりませんでした。
その得意科目を活かせる学科がないかと,あれこれ探していると
あれ?「建築」?
そんな単純な理由で「建築」を学ぶことになりました。
強い意志で「建築」を学ぼうと志していた読者様には,少し偉そうな発信に思われたと思います。
これから,いや,今現在,「建築」に関して頑張っている方々に
あまり力になれませんが,少しでも役に立てる余生を送りたいと思っています。
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