建築基準法の改正は,頻繫に行われますが,今回の改正は重要な改正を含んでいますので,簡潔に解説いたします。
建築実務を業とされている方は,ご周知の内容ですので,読み飛ばしてください。
以下,国土交通省HPを参考にして,改正(令和元年6月25日施行のもの)の概要を要約します。
はじめに
最近の事故,災害等を踏まえ,建築物・市街地の安全性の確保を図る必要性があること,また空き家対策として,既存建築ストックの有効活用を図る必要性があること,さらに,各種規制の合理的かつ実効的な建築規制制度を構築することを目的とし,「建築基準法の一部を改正する法律(平成30年法律第67号)」が平成30年6月27日に公布されました。
一部の規定については,既に平成30年9月25日から施行されたところですが,残りの規定について,令和元年6月25日から施行されることとなりました。
単体規定関係
建築確認を要しない特殊建築物の範囲の拡大【第6条第1項第一号】
- 法別表第1(い)欄に掲げる用途の特殊建築物のうち,確認を要するものを,当該用途に供する部分の床面積の合計が 100㎡ → 200㎡を超えるものに改正
- 上記改正により200㎡以下の建築物の他用途への用途変更についても,建築確認手続きが不要になりました。
【解説】この改正が非常にメリットがあります。一般の方々にとって一番の改正です。これだけ覚えておくだけで良いと思います。テナントを借りる際に「100㎡」以下の物件を必死に探した経験がある方も多いと思います。
【注意】手続きは不要となりますが,法の適合義務まで緩和される訳ではありませんので,ご注意ください。また,建設地によっては条例(福祉条例など)が制定されている場合がありますので,事前にご確認してください。
耐火建築物等としなければならない特殊建築物の対象の合理化【第27条第1項】
- 3階建で延べ面積 200 ㎡未満の商業施設,宿泊施設,福祉施設等について,耐火建築物等とすることを不要になりました。
大規模建築物の区画に関する規制の合理化【法第26条,第36条】
- 従来の防火壁のほかに,防火上有効な構造の防火床による区画も可能になりました。
共同住宅等の各戸の界壁に関する規制の合理化【法第30条】
- 共同住宅等の天井の構造を遮音性能に適合するものにした場合は,各戸の界壁を小屋裏又は天井裏に達しなくてもよいことになりました。
【解説】建築実務では,この改正は,とてもありがたいです。
延焼のおそれのある部分の定義の見直し【第2条第6号】
- 火源に対して角度がある場合の延焼のおそれのある部分を見直しました。
集団規定関係
用途規制の適用除外に係る手続きの合理化【第48条】
- 日常生活に必要な建築物で騒音,振動対策等の一定の措置が講じられるものの建築について,特例許可の際における建築審査会の同意が不要になりました。
(例:第一種低層住居専用地域のコンビニエンスストア)
防火・準防火地域における延焼防止性能の高い建築物の建蔽率の緩和【第53 条第3項】
- 現行の緩和策に加え,準防火地域内の耐火建築物,準防火建築物等の建蔽率を10%緩和
(補足)この改正もかなりのメリットがあるのではないかと思います。
防火・準防火地域の門・塀における木材利用の拡大【第61条】
- 周囲への建築物に対する延焼の防止ができる構造の場合は,不燃材料としなくてもよいことになりました。
その他
既存建築物について2以上の工事に分けて用途の変更に伴う工事を行う場合の制限の緩和【第87条の2】
- 増改築等を伴わない用途変更についても,特定行政庁が全体計画を認定することで,段階的・計画的な改修が可能になりました。
建築物の用途を変更して一時的に他の用途の建築物として使用する場合における制限の緩和【第87条の3】
- 既存建築物を一時的に他用途(学校,福祉施設,店舗等)に転用する場合,新築等の仮設建築物と同様に一部の規定を緩和する制度を導入
建築確認の申請書類
(注意)今回の改正によって,申請書(第4面)が改訂されています。建築実務では,最新の申請書で確認申請をするようにしてください。
参考リンク・リーフレット等
建築基準法の一部を改正する法律(平成30年法律第67号)の詳細等については,以下の国土交通省のホームページを御参照ください。
国土交通省ホームページ(建築基準法の一部を改正する法律(平成30年法律第67号)について)(外部サイトへリンク)
以下,国土交通省作成のリーフレット等を掲載しておきます。参考にしてください。
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