【構造設計一級建築士試験対策】令和元年度の考査問題及び修了判定の概要を独自に解説

構造設計一級建築士 令和元年度解説 構造設計一級建築士試験対策

令和元年年8月から10月にかけて (公財) 建築技術教育普及センターが実施した「構造設計一級建築士講習の修了考査」 (令和元年10月27日実施) の考査問題及び修了判定の概要を私が体系的にまとめます。

考査問題の概要

考査問題の構成

  • 午前/法適合確認/構造関係規定に関する科目/記述式/3時間
  • 午後/構造設計/建築物の構造に関する科目/択一式及び記述式/3時間

【要点】午前の「法適合確認」の科目は,3時間以内にすべての解答するには,時間が足りません。かと言って,答案用紙の空欄解答は,避けたいのです知っているキーワードをとにかく書きまくりましょう

考査問題の概要

法適合確認

【問1】一貫構造計算プログラムを用いた鉄骨造建築物の構造計算時の入力データの間違い等を指摘する設問
  1. 層の重量を計算する問題
  2. 一次設計用地震力の計算結果の誤りを指摘する問題
  3. 地震力による応力図の誤りを指摘する問題
  4. 構造設計者の「耐震設計に関する総合所見」の誤りを指摘する問題

【補足】よく出題される設問です。日常的に,一貫構造計算プログラムを理解して使用している構造計算者なら解ける問題です。

【問2】木造一部2階建て住宅の壁量計算・耐力壁配置等に関する設問
  1. XY両方向の地震力に対する壁量、四分割法による1階の XY両方向の耐力壁配置の適合・不適合を問う問題
  2. 耐力壁の水平加力実験結果より許容せん断耐力を求める問題,この耐力壁を壁倍率 5 として用いる場合の耐力壁周囲の構造計画上の問題点とその対応策を記述する問題

【補足】基本的な問題なので,必ず正解しましょう。

【問3】鉄筋コンクリート造建築物の耐震計算ルート3による設計に関する設問
  1. 柱の曲げ終局モーメントを計算する問題 ,せん断耐力を計算しせん断余裕度を求める問題,破壊モードを推定する問題 ,柱種別を判定する問題
  2. 3階建て建築物について保有水平耐力を求める問題,3階柱の種別を判定する問題,3階のDs値を算定する問題,1階の必要保有水平耐力に対する1階の保有水平耐力の比率を求める問題
  3. 示された構造設計者の「総合所見」を適切な文章に修正する問題

【補足】「構造設計一級建築士」らしい問題。合否の分かれ目となるでしょう。
【対策】日常の業務で「黄色本」をしっかり読むこと。

【問4】鉄骨造2層のラーメン建築物の崩壊メカニズム等に関する設問
  1. 全体崩壊メカニズム形成時の塑性ヒンジの発生位置を骨組図にプロットする問題
  2. 崩壊メカニズム時の引張側柱の軸力を求める設問
  3. 崩壊メカニズム時の保有水平耐力を求める問題
  4. 崩壊メカニズム時の柱梁接合部の安全性を検討する問題,接合部パネルを塑性化させない対応策を記述する問題

【補足】前問に同じく「構造設計一級建築士」らしい問題。合否の分かれ目となるでしょう。
【対策】日常の業務で「黄色本」をしっかり読むこと。

【問5】鉄骨造2層2スパン骨組の種別判定及び梁の保有耐力横補剛等に関する設問
  1. 柱梁接合部の仕口部の溶接について「構造設計」及び「鉄骨製作」それぞれの段階で留意すべき点を記述する問題
  2. 1階の筋かいの部材としての種別を判定する問題,1 階の部材群としての種別を判定し Ds値を求める問題
  3. 吹抜けに面する大梁の保有耐力横補剛に関する問題

【補足】鉄骨造の工場等の設計経験が豊富な設計者は,容易に解ける問題です。

構造設計

【問1】択一式問題
  • 構造設計者の倫理
  • 材料力学,荷重・外力と建築物の応答
  • 鉄筋コンクリート造・鉄骨造・木造等に係る建築構造,基礎,耐震診断・耐震補強等の基本的事項に関する問題

【補足】基本問題が多い択一式問題で,高得点を目指してください。

【問2】2 点に集中荷重を受ける両端固定梁の真の崩壊メカニズム・崩壊荷重を求める設問
  1. 構造物の崩壊荷重に関する3つの条件及び定理の名称を記述する問題
  2. 塑性ヒンジの発生位置を考慮した 4 つの崩壊メカニズムから真の崩壊メカニズム及び崩壊荷重を求める問題
  3. 真の崩壊メカニズム時の曲げモーメント図を描く問題
  4. 真の崩壊メカニズムではない崩壊メカニズムより崩壊荷重を求めた場合の安全性を評価する問題

【補足】構造設計の実力を問う問題。難問

【問3】鉄骨造門型骨組の柱の座屈に関する設問
  1. 門型骨組の柱の座屈長さ係数Kを求めるための GA及び GBの値を求める問題
  2. ブレースがない門型骨組の柱の有効座屈長さ,柱の長期許容圧縮応力度,柱が長期許容圧縮応力度に達するときの軸力を求める問題
  3. 柱頭の水平移動を拘束するためにブレースを入れた門型骨組の柱の有効座屈長さ,柱の長期許容圧縮応力度,柱が長期許容圧縮応力度に達するときの軸力を求める問題
  4. 柱頭の水平移動を拘束するために必要なブレースの断面積を求める問題

【補足】構造設計の実力を問う問題。 鉄骨造は,「座屈」に関する諸問題が重要事項なので,日々の業務でしっかり対策をしておきましょう。

【問4】直接基礎(独立フーチング)及び杭基礎の長期許容鉛直支持力等に関する設問
  1. 地盤の長期許容鉛直支持力度及び独立フー チングの長期接地圧を求め安全性を判定する問題,独立フーチング基礎の即時沈下に関する問題
  2. 場所打ちコンクリート杭の長期許容鉛直支持力を求める問題

【補足】基礎構造は,構造形式を問わず必須事項です。考査の合否にかかわず,しっかりと学習しておいてください。

修了判定の概要

基本事項

  1. 修了判定は,講義の出席状況及び修了考査の結果に基づき行う。
  2. 修了考査は,「法適合確認」及び「構造設計」の科目区分により実施し,それぞれ所定の評価を受けた場合,「科目合格」の取扱いとする。
  3. 「講義の全課程出席」,かつ,「修了考査の法適合確認及び構造設計のいずれも科目合格」に該当する場合に限り,講習を修了したものと判定する。ただし,以下の項目に該当する者については,それぞれここに記した場合に修了したものと判定する。
    ア)「構造計算適合性判定資格者」の資格を有する受講者であって事前に当センターが認めた者にあっては,「 建築物の構造に関する科目 」の うち,「構造設計総論の講義受講」に該当した場合,修了と判定する。
    イ)平成29,30年度の構造設計一級建築士講習における修了考査を受験し,修了判定において未修了とされ,かつ,「法適合確認」又は「構造設計」のいずれか一方について科目合格となった者にあっては,当該修了考査で科目合格とならなかった科目について修了考査(令和元年10月27日実施)において合格となった場合。

修了判定の方法

  1. 講義については,すべての講義時間において「欠席」に該当しなかった場合には「講義の全課程出席」,すべての講義時間のうち一つでも「欠席」に該当した場合には「講義欠席」とそれぞれ判定する。
  2. 修了考査については,下記の考査区分ごとの採点のポイントに基づき採点された結果を基にして,合否を判定する。

記述式問題の採点のポイント

法適合確認
  1. 構造関係規定の理解度,解釈能力
  2. 建築関係基準の一般的理解力
  3. 構造図面の理解度,判読能力
  4. 建築図面の一般的理解力
  5. 計算書等の理解力,計算能力
  6. 法適合確認に関する指摘を的確に表現する能力
構造設計
  1. 構造設計に関する理解力
  2. 建築物に関する荷重・外力,構造力学・解析,構造材料,構造計画の理解力
  3. 木造の特性等に関する理解力
  4. 鉄筋コンクリート造の特性等に関する理解力
  5. 鉄骨造の特性等に関する理解力
  6. 構造設計に関する知識を的確に表現する能力

合否の判定方法

法適合確認
  1. 5問について 、問題ごとに著しく低い評価がないかどうか判定する。
  2. 5問の評価 の合計が一定以上であるかどうか判定する。
  3. 上記をすべて満たした場合,「法適合確認」は科目合格となる。
構造設計
  1. 4肢択一式20問の評価の合計が一定以上であるかどうか判定する。
  2. 記述式3問について,問題ごとに著しく低い評価がないかどうか判定する。
  3. 4肢択一式20問および記述式3問の評価の合計が一定以上であるかどうか判定する。
  4. 上記をすべて満たした場合,「構造設計」は科目合格となる。

修了判定の総括

科目「法適合確認」2問,科目「構造設計」1問,計3問の鉄骨構造に関する問題は全て,他の分野の問題に比較して正答率(得点)が低くなっていた 。次年度以降の受講者の鉄骨構造に関する自学・自習に期待したい。

次回の考査対策(重要)

「鉄骨構造」に関して,正答率が低くなっていることにより,次回の考査でも「鉄骨構造」の設問が出題されると推測されるので,しっかりと対策をしておきましょう。


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