ユニットバスのカビの掃除に困っていませんか?【一級建築士】が解説【完全版】

UB掃除 掃除

皆様のお悩みを「一級建築士」が解説します。


私たちは,建築の設計を主たる業務にしているにもかかわらず,意外と多い質問です。インターネット環境がこんなにも普及しているにもかかわず不思議に思います。
建築士は日常的に色々な業務で忙しく,「掃除」たる業務は専門の下請業者に任せることが一般的です。
少しばかり長くなりますが,科学的」「実用的解説いたします。


「ユニットバス」とは

ユニットバスの一例
ユニットバスの一例(TOTO sazana より引用)

日本の高度経済成長期に急激に発達した「ユニットバス」(=和製英語です。正式な英語表記は,「Bath module」となります)。
我が国の設計図面では,略して「UB」と表記されることが多いです。
最近では,ユニットバス製造各社によって,様々なオプションを選べることができるため,「システムバス」とも呼ばれることが多いです。


(補足)ワンルームマンションやビジネスホテルなどに多い,バスタブ・洗面台・便器を同室内に設置しているタイプのものを「ユニットバス」という誤解をしている方がおられますが,実際は違います。これは特に「3点ユニット」と呼びます。


「ユニットバス」は,あらかじめ工場で防水性能が高い素材FRP:Fiber-Reinforced Plastics)を成型しておき,現場で組み立てます。ひと昔前の在来工法(タイル貼りによって造る工法)と比べて,工事期間が大幅に短縮されるうえに水漏れのおそれが少ないことから,戸建住宅をはじめホテルやマンションなど様々な用途の建築物に使用されています。

「カビ」を「科学的」に学びましょう!

ユニットバスのカビを科学的に解説

まえがき

菌やカビなどの微生物と人間とのかかわりには,人類の誕生以来の長い歴史があります。
微生物は,人間との利害関係から「有用微生物」「有害微生物」に分けられますが,微生物からすれば,その生息圏に人間があとから参入したようなもので,私たちの体内すらその生息圏内にあります。食べ物や住み家をめぐって確執や争いが生じます。
私たちは自らの生命はもちろん,生活に必要不可欠なものを彼らの侵入・危害から守らなければなりません。ただし,人間にとって一見有害に思える微生物でも,実は人間に対して何らかの好ましいはたらきをしてくれている例はたくさんあります。つまり,彼らとの闘いは,時と場所を限定して行う必要があります。

「カビ」の正体は?

日常で「カビ」ときくと,浴室(前出のユニットバス等)に生えている黒い「カビ」や,ブルーチーズの青い「カビ」を思い浮かべますよね。これらを専門用語で「糸状菌(しじょうきん)」とよばれています。日常生活で「カビ」とよばれるものの大半が,この糸状菌です。
これらの「カビ」は,生物学の分類では,「菌類」のグループに入ります。この「菌類」のグループには,パンやビールをつくるために欠かせない「酵母」や,「カビ」よりもずっと大きいキノコも含まれています。
「カビ」と「酵母」は,形は違えどもかなりにており,専門的には糸状菌と酵母の仲間をまとめて「真菌」といいます。

食パンのカビ
食パンのカビ

役に立つか立たないか

細菌には,赤痢やコレラなどの感染症を引き起こす原因として発見されてきたものが多くありますが,人類の役にたっている細菌もたくさんいます。たとえば納豆づくりに利用される枯草菌や,ヨーグルトやチーズづくりに欠かせない乳酸菌,汚物処理に利用される細菌群などです。

一方,「カビ」にも,いわゆる水虫菌やイネイモチ病菌など人や作物に害をもたらす「カビ」もいれば,抗生物質の生産,醸造業に利用される酵母などのように,人に恵みを与えてくれる「カビ」も知られています。

このような「カビ」や「菌類」のなかには,人類の生活環境よりはるかに過酷な環境で生きているものがおり,現在も新しい性質をもった種の探索,そして発見が続いています。
人に害をもたらすものに対しては「防御法を,益をなすものに対しては「利用法を考えていくことが大切な課題です。

「カビ」や「細菌」の塊「コロニー」とは?

1個の「カビ」や「細菌」の大きさは,1~100 マイクロメートルしかありませんので,肉眼で確認することはできません
でも,最初は1個だった「カビ」や「細菌」も,水分・酸素・栄養が適した環境になると一気に天文学的な数字にまで増殖します。
このように,1個の「カビ」や「細菌」が数億から数十億個にまで増えてかたまったものを「コロニー」といいます。そして,この「コロニー」は,肉眼で十分に確認することができます。たとえば,お餅にできた緑色のボツボツは「カビ」の「コロニー」です。

場所別に生息する微生物一覧表

場所主な微生物
洗面台や浴室の
ピンクヌメリ
・ロドトルラ(酵母)
・メチロバクテリウム(細菌)
便所の黒ずみ・エキソフィアラ(黒色酵母)
・クラドスポリウム(黒カビ)
ドアノブ,リモコン,
パソコンのキーボード
・スタフィロコッカス(黄色ブドウ球菌)
・オウレウス(黄色ブドウ球菌)
浴室の浴槽水・レジオネラ(細菌)
・オウレウス(黄色ブドウ球菌)
エアコン内部や
ビニルクロス壁紙
・アルテルナリア(ススカビ)

「カビ」の「生態」を知ろう

「カビ」や「菌」が好む環境

ご存知のように,「カビ」や「菌」は人間からみて「汚い場所」「水気の多い場所」「日の当たらない場所」を好んで棲んでいます。
「カビ」や「菌」は素早く動けないので,「栄養」や「水」を求めて遠くまで移動することができません。清潔で乾燥した環境では栄養や水を十分に獲得できず,生育できないのです。言い換えると,生きていくのに栄養と水(高湿度)が必要なのです。

この他にも大切な条件があります。ヒトなどの高等生物とは違い,体内(細胞内)の環境を自在にコントロールできない「カビ」や「菌」にとって,生きるためには外部の環境がとても大切になります。適切な「温度」や「pH(酸性度)」は特に重要です。どちらの因子も,普通の「カビ」や「菌」では「高すぎず・低すぎず」の状態が最適となります。酸素や窒素など,決まった種類の物質がないと生きていいけないものもいます。

「なぜ」増えるのか

「カビ」や「菌」が増えるというのは,細胞が分裂を繰り返して,1個から2個,4個…と同じ細胞をつくりあげていくことです。また,先に説明した「好む環境」とは,その細胞分裂を支える場(低ストレス環境)を意味し,いったんこの「好む環境」にであった「カビ」や「菌」は,すぐに増えようとします。

ではなぜ,「カビ」や「菌」は好む環境で増えるのでしょうか?
「カビ」や「菌」の細胞は,タンパク質や核酸,脂質,糖質などの高分子化合物の集合体からできています。細胞が増えるにはこれらの化合物を増やす必要がありますが,外部からの栄養は,これら化合物の「材料」や「エネルギー」となります。
また,高分子化合物を合成するには酵素が必要ですが,この酵素は水を利用します。また,酵素は適した温度とpH環境でしかうまく働きません
つまり,「カビ」や「菌」が好む環境とは,細胞の中の酵素がよく働く環境ともいえます。「カビ」や「菌」はこのようにして細胞の分裂・増殖を繰り返して,種の存続を行ないます。

どうやって死滅するか

「カビ」や「菌」の死滅は,人間などの高等生物の死とは異なり,細胞死とよばれています。
「細胞死」とは,細胞が永久に増えられなくなった状態を意味します。
細胞は,高温や低温,乾燥や殺菌剤などの極端に高いストレス環境にさらされると細胞死へと導かれます。

細胞死は,一部の酵素の機能が極端に低下したり,細胞内の代謝バランスが崩れたり,細胞の構造が壊されたりすると起こります。
たとえば,細胞が極端な高温にさらされると,多くの酵素が機能を失います。高圧などの物理的な力は細胞構造を破壊します。これらが,結果として細胞死を引き起こすのです。
また,酵素はDNAの遺伝情報をもとに合成されます。
したがって,DNAの遺伝子情報が書き換えられてしまうと,正しい酵素が合成されず細胞死へと導かれます。
このようなケースは紫外線や放射線,活性酸素などの働きによって起こり,DNAが傷つけられることも,細胞死を引き起こす一因となります。

「カビ」や「菌」の生育や増殖に適した環境の一覧表

栄養ほとんどの有機物や無機塩が栄養になる
一般に水に溶けるものを好む
ただし,これらも高濃度になると,
生育が妨げられることもある(食塩や糖類など)。
一般的な「カビ」は相対湿度80%以上
「細菌」は相対湿度90%以上が必要条件。
乾燥状態を好む一部の「カビ」(好乾性カビ)や
「細菌」(耐浸透圧性酵母)でも相対湿度65%程度は必要。
湿度一般的な「カビ」や「細菌」は,0~40℃で生育する。
最適条件は,「カビ」で25~28℃,「酵母」で27~30℃,
「細菌」で36~38℃。
ただし,80℃以上でも生育する好熱性細菌も見つかっている。
pH一般的な「カビ」や「酵母」は,pH2.0~8.5 で生育可能
最適は,pH4.0~6.0),
「細菌」は,pH5.0~9.0 で生育可能
(最適は,pH6.0~pH8.0)。
酸性やアルカリ性環境を好む細菌もいる。
酸素「カビ」の生育には酸素が必須
「酵母」や「細菌」には酸素を必要としないものや,
酸素があると逆に生育できないものもいる。

「カビ」の除去方法

言うまでもなく,大切なのは「予防」です。
そんなことは誰でも分かっていますよね。分かっているけどできないのが「予防」。
恥ずかしながら,我が家でもなかなか「予防」ができていません。
日常的のしっかりと「予防」ができている方々は,Web検索等は行わないと思います。
皆様が本当に知りたいことは「具体的なカビの除去方法」だと思います。

私たちの生活空間には,「カビ」が「コロニー」をつくりやすい場所がたくさんあります。
代表的な例では,浴室やキッチンなどの水まわり,窓のサッシ,押入などです。

株式会社ダスキンによるアンケート調査で,最も「カビ」の発生が気になる場所は,「浴室(ユニット等)」だそうです。

以下に,具体的な「カビ」の除去方法について紹介します。

初級編

日常的に利用しやすい方法です。

①まず,「カビ」の栄養源である汚れを落とします。

床や壁全体に水をかけ,水で湿らせたブラシに浴室用洗剤をスプレーして全体をこすります。

目地に汚れがある場合は,水で湿らせたメラミンスポンジでこすります。

その後,全体にシャワーで水をかけ,汚れや洗剤を洗い流します。

②次に,目地の「カビ」を除去します。

浴室の中でも目地に生えた「カビ」は特に除去するのが難しいので,「カビ取り剤(商品名:カビキラーなど)」や「塩素系漂白剤(商品名:ハイターなど)」を使う必要があります。

床は,「塩素系漂白剤」をハケなどにつけ,「カビ」の部分に塗ります。

壁は,ティッシュペーパーやキッチンペーパーで作った「こより」を「塩素系漂白剤」で湿らせ,「カビ」の生えた目地に沿わせて置きます
その上から「ラップ」で覆って乾燥を防ぎ,そのまま「カビ」の色が消えるのを待ちます(30分程度)。
色がなかなか消えない部分は,水で湿らせたジーンズ生地などに「クリームクレンザー」をつけ,こすります。

シャワーで水をかけて汚れやカビ取り剤を洗い流し,その後よく乾燥させて終了です。

中級編

初級編で,ほとんどの「カビ」は除去できます。

しかし,まだ気になるようでしたらこの方法を試してみましょう。

その方法は,「プロ」の業者が使用している材料を使用するということです。(自力でできる最終手段です。)

なぜなら,一般的に販売している商品は,名を変え,キャッチコピーを変え…あの手この手で商品が売れるように工夫しています。読者様の中の数人は,商品の見た目や製品名(成分等を分析せずに)で購入して騙されたという経験をお持ち方もいらっしゃると思います。

私たちは,業者さんとたくさんの取引がありますが,ハウスクリーニング業界の中でも実績と歴史があり好評なのが鈴木油脂工業株式会社の「カビ取り剤」です。

ひと昔前までには手に入れることが困難だった商品も今では,ECサイトで購入することが可能です。鈴木油脂工業株式会社の「カビ取り剤」の一例を紹介します。(各ECサイトの最安値が分かるようにに設定してあります)

私自身で実際に使用した経験がないので,自ら使用してみて,その結果を近々報告する予定です。
もうしばらくお待ちください。

上級編

言うまでもなく,「掃除のプロ」に依頼する方法です。

庶民にとっては最も避けたい方法ですが,「お金」に余裕のある読者様にとっては,一番有効であるかもしれません。

最後に

いずれの方法で対策するかは,ご本人様次第です。

きれいな浴室で,「快適な生活」を送っていただければ,建築士として幸いです

ハウスクリーニングなら【おそうじ本舗】

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