建築電気設備とは?

建築電気設備とは 建築設備

電気設備と建築電気設備

現代都市は,超高層ビルや全面ガラスカーテンウォールの建槃などさまざまな姿かたちの建物がきらびやかに立ち並び,照明設備,空調設備を持たなかった時代には考えられないような複雑な空間を抱えた建築も数多く出現している。

建築を取り巻く環境も,周辺地域のみならず都市から国,地球と,そのかかわる事象はますます広範囲に,そして複雑になっている。

建築は人間が社会生活を営む上で最も身近で重要な施設であるが,社会とのインターフェースとして見ると,その役割は従前以上に重要性を増している。

建築が社会とのインターフェースの役割を果たす中で,特に大きな機能を担っているのが建築電気設備である。

本来,電気設備は人間の社会活動にかかわって人や社会とのインターフェースの役割を担うとともに,明かりが欲しい,テレビを見たいなど,人が必要とするさまざまな便益を提供するために設けられるシステムのことである。

自宅で扱うパソコン通信を例にとれば,対象となるシステムは,電気を得るためのコンセントから電力会社の発電設備まで,通信用アウトレットから通信会社が提供する通信網のシステムまでとなり,広義にとらえればそのすべてが電気設備となる。

この電気設備は、設けられる場所や用途によっていくつかに分類することができる。

一般には,建築電気設備の他,鉄道の電気設備,飛行機・船舶・自動車の電気設備,プラントや工場の電気設備および社会インフラである電力会社の電力供給設備や電話会社の通信網設備などである。

この中で建築電気設備とは,明確な定義はないものの,建築物とその関連の範囲に設けられる電気設備のことを総称して用いられる言葉である。

たとえば電力の供給設備は,供給者側から見る場合と,需要者側から見る場合の2通りを考えることができるが,ここでは需要者側から見て,敷地内に引き込まれてからの設備を建築電気設備という。

建築電気設備の貢献

現代のオフィスビルの中で,自席に座ればスイッチに触れる必要もなく照明は点いており,パソコンはキーを操作すればただちに海外とも連絡ができ,移動中も携帯電話で会話やメール通信が行え,会議室には大型画面の映像装置があり資料やテレビ直像を映し出している。これらはすべて建築電気設備のお陰といっても過言ではない。

たとえばパソコンを使うための電気は,電力会社の配電網,いわゆる電カインフラと接続することで供給されている。

一般には電力会社からの電気(一般には,6[kV]以上の高電圧 ) を建物ごとに 200[V] あるいは 100 [V]に変換して使用している。

変換された電気は各階,各所に分配され,照明器具,コンセントおよび空調,給排水,エレベータなどの各種の動力機器に送られている。

ちなみに,この接続,変換,分配などを行う大本の装置類を納めている部屋が電気室である。建物を人にたとえれば,電気室は心臓部に相当する。そして心臓から出る大切な血管の通る道が,配線シャフト(EPS:Electric Pipe Shaft)である。

上記の電カインフラとの接続が意味していることは,通信インフラを含め建築電気設備は,いわゆる社会インフラとの接続,整合という役割を担っており,建築が社会に対して有効に機能するための重要な要件でもある。

さらに,電気設備は種々の便益を享受するユーザーとのインターフェースであるという大切な役割も担っているが,特に建築電気設備は,建物を利用する人々が目にし,耳にし,あるいは触れることの多い設備でもあり,その重要性は大きい

また,建築が人々の社会活動を行う場として機能するためには,照明設備,各種の動力設備を効率良く,そして省エネルギーに運転管理する必要がある。そのためのシステムが BAS(Building Automation System)と呼ばれる建築電気設備である。少々語弊があるかもしれないが,建物の頭脳である。

同様に,安心,安全な建築のためにも建築電気設備は大いに寄与している。たとえば建物の火災を知らせる自動火災報知設備,不法な侵入を防止するための防犯設備等々である。

またこれらに加えて,建築には高度情報化社会を象徴する最新の情報通信システムが多数取り入れられている。

たとえば情報通信のネットワーク設備携帯電話のアンテナ設備など,建物の頭脳と神経を構成するシステムの一つである。

建築を人間にたとえてみたが,人間が社会活動を営むための場として建築が有効に機能し,長く生き続けていくために,建築電気設備には日々進歩発展する諸技術への対応はもちろん,社会変化への柔軟な対応が求められている

そして建築が将来にわたり良好な社会資産であるために,建築電気設備の大いなる貢献が期待されている。

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