電気学の歴史
静電気の時代
人が知った最初の電気現象は,雷であるといわれているが,実際には,電気の発見は今から約2,500年前に遡る。
紀元前600年頃に,ギリシャのタレスが琥珀(こはく)を擦るとほこりを吸いつけることを観察し,これが歴史上での電気学の初めとされている。
エレクトリシティ(electricity = 電気)は,琥珀を意味するギリシャ語の「エレクトロン」に由来している。
近代電気学は,「磁石論」を発表したギルバート(イギリス)の1600年から始まり,以後18世紀までは “静電気” の時代であった。
動電気の時代
その後,1800年にボルタ(イタリア)が電池を発明したことによって電流を継続的に流せるようになり,多くの研究が始められた。
19世紀は “動電気” の時代で,代表的なものにファラデー(イギリス)の電磁誘導の法則や,マクスウェル(イギリス)の電磁界理論などがあげられる。
一方,電信については1830年代に実用化され,電気の最初の大規模な応用として電信網がつくられた。
白熱電球や直流配電により成功したエジソン(アメリカ)は,電気の汎用における発明家として有名である。
電気の歴史で代表的な事象を,表1に示す。
日本における電気学は,1776年に平賀源内がエレキテル(摩擦起電器)を修理して復元したことに始まるといわれている。
西暦 | 発明者 | 電気技術 |
BC600 | タレス(ギ) | 摩擦電気を観察 |
1600 | ギルバート(英) | 磁気と静電気を区別 |
1749~52 | フランクリン(米) | 避雷針を発明 |
1776 | 平賀源内(日) | エレキテルを修復 |
1785 | クーロン(仏) | 電荷間,磁極間の引力と斥力を発表 |
1800 | ボルタ(伊) | ポルタの電堆,電気盆,電池を発明 |
1820 | エルステッド(テ) | 電流の磁気作用を発見 |
1827 | オーム(独) | オームの法則を発見 |
1830 | ヘンリー(米) | 自己誘導を発見 |
1831~45 | ファラデー(英) | 電磁誘導の法則を発見 |
1837 | モールス(米) | モールス符号を考案し,電信実験に成功 |
1841 | ジュール(英) | 電流の発熱作用を表すジュールの法則を発見 |
1867 | シーメンス(独) | 自励式発電機を発明 |
1873 | マクスウェル(英) | 電気および磁気に関する論文を発表 |
1876 | ベル(米),グレイ(米) | 実用的な電話を発明 |
1878 | スワン(英) | 炭素フィラメント電球製作 |
1879 | エジソン(米) | 炭素フィラメント電球製作 |
1888 | ヘルツ(独) | 電磁波伝送実験による電磁波の性質を究明 |
1897 | ブラウン(独) | ブラウン管を発明 |
1901 | マルコーニ(伊) | 大西洋横断無線通信式実験に成功 |
1906 | ド・フォレスト(米) | 電子管(3極真空管)を発明 |
1925 | 八木秀次,宇田新太郎(日) | 八木・宇田空中線(アンテナ)を発明 |
1946 | モークリー,エッカート(米) | デジタル電子計算機ENIACを製作 |
1971 | インテル社(米) | マイクロプロセッサを発表 |
1972 | IBM社(米) | フロッピーデイスクを発表 |
1983 | ソニー社(日),フィリップス社(オ) | CDを発表 |
建築における電気設備の歴史
日本においては,1878年に初めてアーク灯による電気の火が灯り,1883年に東京電燈(現在の東京電力)の設立が許可された。
続いて,1884年に白熱電灯が上野駅で点灯され,東京電燈が電気事業として,日本郵船,東京郵便局,今村銀行に電灯用電力を配電(火力発電による)した1887年頃が,建築における電気設備の本格的なスタートとみられる。
現在多く使用されている蛍光灯は,1940年に製品化され現在に至っている。
情報装置については,1906年に電子管(3極真空管)がつくられ,1948年にトランジスタが開発された。
その後,1965年以降 IC(集積回路)が使用され,現在の電子計算機,通信装置および制御装置などに至っている。
さらに1980年代に入ると,OA化,ニューメデイア,電子化,デジタル化などをキーワードとして,高度情報化が社会現象としてクローズアップされ始めた。
その中で,1984年にアメリカに完成したシティプレースは「インテリジェントビル」と呼ばれ,その後日本にもインテリジェントビルが出現することとなる。
日本人が電気の分野で世界初の発明をした代表的なものは,1925年の八木・宇田アンテナである。これは,テレビ受信用アンテナとしてなじみ深く,世界各国で使われている。
建築における電気設備のあり方という点において,1990年代前半からは「ひと」と「もの」の環境づくりに加え,「地球環境配慮」をより意識した建築へと社会の価値観がシフトしてきている。
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